「青」という言葉がなければ、青は見えないのか?

ほほう、今日は実に面白い話をしようと思うのじゃ。
古代ギリシャの詩人ホメロスは、海を「ワイン色」と表現したのじゃ。なぜか?実は当時のギリシャ語には「青」を表す言葉がなかったからじゃよ。
では、古代ギリシャ人は青い海を見て「赤っぽいなあ」と感じていたのか?いや、そうではないのじゃ。物理的には同じ色が見えていたはずじゃが、言葉がないことで「カテゴリー」として認識されていなかったというわけじゃ。
この「言語が思考を形作る」という考え方をサピア=ウォーフ仮説と呼ぶのじゃ。わしがずっと気になっておったテーマでの、今日は科学的に検証してみようと思う。
言語は「思考のメガネ」として機能する

強い仮説と弱い仮説の違い
つまりね、めちゃくちゃ簡単に言うと――この仮説には2つのバージョンがあるのじゃ。
| 種類 | 主張 | 現在の評価 |
|---|---|---|
| 強い仮説(言語決定論) | 言語が思考を完全に決定する | ほぼ否定 |
| 弱い仮説(言語相対論) | 言語が思考に影響を与える | 多くの実験で支持 |
言語は思考を「決定」するのではなく、「調整」しているというのが現在の科学的コンセンサスなのじゃ。
色の認識で証明された言語の影響
2007年、MITの研究チームが衝撃的な実験結果を発表しての。ロシア語には「青」に相当する単語が2つあるのじゃ。goluboy(水色)とsiniy(濃い青)じゃ。
実験の結果、ロシア語話者は英語話者より青の区別が50ミリ秒速かったのじゃよ。言葉があることで、脳が自動的にカテゴリー分けを行っていたというわけじゃ。
方向感覚も言語で変わる
オーストラリア先住民のクウク・サアヨッレ語には「左右」という概念がないのじゃ。代わりにすべてを東西南北で表現する。「君の北の足に蟻がいるぞ」という具合にの。
驚くべきことに、この言語の話者は目隠しをしても方角を正確に把握できるのじゃ。常に体内コンパスが作動しているようなものじゃよ。
最新の脳科学研究で、言語と知覚の関係が見えてきたのじゃ

最近、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使った研究でな、興味深いことがわかってきたのじゃ。
言語野(ブローカ野・ウェルニッケ野)と知覚処理野が同時に活性化する。つまり、言語カテゴリーが知覚の段階ですでに介入している可能性がある。
スタンフォード大学のレラ・ボロディツキー教授はこう述べておるのじゃ。「言語は思考の道具であり、道具によって可能な作業が変わる」とな。
面白いのは、二言語話者の実験じゃ。使用言語によって性格テストの回答パターンが変化することが確認されておる。日本語を話しているときと英語を話しているときで、同じ人でも微妙に「人格」が変わるということじゃよ。
ついでに覚えておくと面白い雑学じゃ

- 虹の色数は言語で違う:日本語では7色、英語では6色、リベリアのバッサ語ではたった2色。物理的には同じスペクトルなのにの。
- 「肩こり」は日本特有?:英語圏ではこの概念がなかったが、単語が導入された後に症状の報告が増えたという説があるのじゃ。
- 時間の向きも言語次第:アンデスのアイマラ語では、未来が「後ろ」で過去が「前」。見えるもの(過去)が前、見えないもの(未来)が後ろという発想じゃよ。
実はの、ワインのソムリエが味覚語彙を獲得すると、実際に味の識別能力が向上することも確認されておる。言語が知覚を鋭敏にするわかりやすい例じゃな。
で、結局どういうことじゃ?

まとめると、こういうことじゃ。
- 言語は思考を「決定」はしないが「調整」する
- 特に注意の向け方・カテゴリー化・記憶に影響を与える
- 新しい言語を学ぶと「思考の複線化」が起きる可能性がある
言語は「思考の牢獄」ではなく、「思考のメガネ」なのじゃ。違うメガネをかければ、世界の見え方が少し変わる。だから外国語を学ぶことは、新しい視点を手に入れることでもあるのじゃよ。
わからないことは、世界で一番おもしろい。
言葉が変われば、見える世界も変わる。そう考えると、新しい言葉を覚えるのがちょっと楽しくなってこないかの?
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