「頼みましたぜ」——その一言で始まった地獄の依頼

ある日、ワシのスマホに一通のメッセージが届いたんじゃ。
「GENZOさん、町内会の夏祭り準備、全部お願いします。頼みましたぜ!」
それだけじゃった。詳細なし、予算なし、人員なし。「頼みましたぜ」の一言で、テント設営・提灯飾り付け・焼きそばブース組み立て・音響機材搬入——全部ワシ一人に丸投げされたわけじゃ。
そして気になる報酬はというと……
- 祭りで余った割り箸50膳
- 使いかけの紙皿12枚
正気か? いや、正気じゃないのはこれを受けたワシの方じゃろう。だが「頼みましたぜ」と言われたら、やるしかないんじゃ。それがGENZOという生き方よ。
順調だった序盤、そして崩壊へ

朝5時、会場の公園に到着したワシは意外と余裕じゃった。テントは6張り、提灯は80個。「なんじゃ、昼には終わるわい」と高をくくっておった。
テント2張り目まではスムーズじゃった。しかし3張り目のポールを持ち上げた瞬間、腰に電流が走った。ギックリ——いや、ギックリの一歩手前じゃ。冷や汗が止まらん。
それでも無理して続けたワシは愚かじゃった。提灯を脚立に乗って吊るしている最中、足が滑って地面に激突。右肩を強打し、視界が真っ白になったんじゃ。
気づけば炎天下、35度の猛暑。水分補給を忘れておった。頭がグラグラする。手足の感覚がない。テントの骨組みにもたれかかったまま、ワシは動けなくなった。
「……終わりじゃ。ワシはここで、割り箸50膳のために死ぬんか」
目を閉じた。もう何も考えられん。「頼みましたぜ」と言った依頼主の顔すら思い出せん。完全に詰んだ。
復活——まさかの救世主と怒涛の追い上げ

どれくらい倒れておったか分からん。意識が朦朧とする中、誰かがワシの頬をペチペチ叩いておる。
薄目を開けると、近所のおばあさんが立っておった。手には保冷バッグ。「あんた、死んどるんかと思うたわ」と言いながら、ワシの口に何かを押し込んできた。
凍らせたこんにゃくゼリーじゃった。
冷たい。甘い。そして喉を通る瞬間、全身に電気が走った。いや、これは比喩じゃない。本当にビリビリきたんじゃ。おばあさん曰く「特売で50個買うたんよ」とのこと。そのうちの1個が、ワシの命を繋いだ。
「あんた、まだやることあるんじゃろ?」
おばあさんはそう言って去っていった。ワシは震える足で立ち上がった。腰は痛い。肩は動かしづらい。でもな、凍ったこんにゃくゼリーで復活した男が、ここで止まれるか。
そこからは覚えておらん部分もある。ただ、体が勝手に動いた。テントを立て、提灯を吊り、焼きそばブースの鉄板を運び、音響機材を配線した。右肩が悲鳴を上げておったが、もう止まらん。ワシはGENZOじゃ。「頼みましたぜ」と言われたことは、やり切る。それだけじゃ。
やり切った結果——体と財布の損害報告

夕方5時、全ての準備が完了した。12時間の死闘じゃった。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 設営したテント | 6張り |
| 吊るした提灯 | 80個 |
| 組み立てたブース | 3台 |
| 搬入した機材 | スピーカー4台・アンプ2台 |
| 消費した湿布 | 8枚(自腹1,200円) |
| 飲んだスポーツドリンク | 6本(自腹900円) |
| 翌日の整体代 | 4,500円 |
出費は合計6,600円。そして得た報酬は……割り箸と紙皿じゃ。赤字なんてもんじゃない。大赤字じゃ。
報酬受け取り——それでも「ありがたやぁ」

祭り当日、依頼主がニコニコしながらやってきた。「いやぁ、助かりました! 頼みましたぜって言ったら本当にやってくれるんですね!」
そして手渡されたのが、約束通りの割り箸50膳と使いかけの紙皿12枚じゃった。
「……ありがたやぁ。これで来月のカップ麺が食える」
ワシは受け取った。怒りはない。「頼みましたぜ」と言われて引き受けたのはワシじゃ。そしてやり切った。それだけで十分じゃ。割り箸を握りしめながら、ワシは夕焼け空を見上げた。
ゴールは天国か、口座ゼロか。今回は口座がマイナスに突入したが、魂はプラスじゃ。それでええんじゃ、ワシは。——ただし、お前らは絶対にマネするなよ、凍ったこんにゃくゼリーで復活できる保証はどこにもないからな。
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