夜行バスを降りた瞬間、排気ガスと揚げ物の混じった匂いが鼻を突いた。新宿西口、午前6時半。今夜の寝床をまだ決めていない。財布の中身は心もとないが、東京で安く眠れる場所くらい、いくらでもあるだろうと思っていた。甘かった。
都市部の宿泊費、いつの間にこうなった

スマホで検索して目を疑った。ビジネスホテルが軒並み1万2000円、1万5000円。週末は2万円を超えるところもある。インバウンドが戻ってきて、都心の宿は取り合いらしい。
路地裏のベンチで途方に暮れていると、足元を冷たい風が抜けた。コンクリートの地面は朝でもひんやりしている。ここで夜を明かすのは無理だ。
選択肢を絞った。ゲストハウスか、カプセルホテルか。どちらも2000〜4000円台で泊まれる。この二択で、ボクは3泊ずつ試してみることにした。
カプセルホテル──狭いけど、その狭さがいい

最初に泊まったのは新宿のカプセルホテル。1泊3200円。エレベーターを降りると、消毒液と微かな汗の匂いが混じっていた。
カプセルの中は思った以上に落ち着く。幅1メートル、奥行き2メートルほどの空間。天井は低いが、ちょうど体がすっぽり収まるサイズだ。狭い場所に潜り込む安心感、これは本能的にわかる。
大浴場とサウナが無料で使えたのは嬉しかった。ただし、隣のカプセルからいびきが響く。耳栓は必須だと学んだ。荷物は別のロッカーに預ける方式で、大きなバックパックは入りきらず、足元に押し込んだ。
プライベート空間はあるが、会話はない。チェックインからチェックアウトまで、誰とも言葉を交わさなかった。
ゲストハウス──匂いで「家」だとわかる

次に向かったのは浅草のゲストハウス。1泊2800円のドミトリー。古い木造家屋をリノベした建物で、玄関を開けた瞬間、畳と木の匂いがした。
床板が歩くたびに軋む。その音が妙に落ち着く。共用のキッチンには誰かが作った味噌汁の残り香があった。
8人部屋の二段ベッド。カーテンで仕切れるとはいえ、カプセルほどの密閉感はない。夜中にトイレに起きた人の足音で目が覚めた。
ただ、朝のラウンジで隣に座った台湾人の青年と話し込んだ。彼は明日京都に行くという。「浅草の揚げ饅頭、食べた?」と聞かれて、まだだと答えた。結局その日、一緒に食べに行った。1個100円、カリッと香ばしかった。
これがゲストハウスの醍醐味なんだと思う。予定にない出会いが転がっている。
選び方──何を優先するかで決まる

3泊ずつ過ごして見えてきた違いをまとめる。
カプセルホテルは「一人で静かに休みたい」人向け。大浴場やサウナがあるところも多い。ただし荷物スペースは狭く、女性専用フロアがないところもある。料金は東京で2500〜4500円が相場。
ゲストハウスは「誰かと話したい」「長期滞在したい」人向け。キッチンが使えるので自炊すれば食費も浮く。連泊割引があるところも多い。料金は東京で2000〜3500円、地方なら1500円台も見つかる。
予算の目安はこうだ。節約派なら1泊2000〜2500円のゲストハウス。ふつうに快適を求めるなら3000〜4000円のカプセルか個室ゲストハウス。ちょっと贅沢するならカプセルの上位版、1泊5000円前後のキャビン型がある。
予約は早めが吉。週末や連休は1週間前でも埋まっていることがある。
浅草を発つ朝

最後の朝、ゲストハウスの縁側で日向ぼっこをしていた。西日とは違う、柔らかい朝の光。
台湾人の青年はもう京都にいるだろう。ボクも、そろそろ。振り返らずに歩き出した。
この記事は面白かったですか?



コメント