枕木を数えながら歩いた高千穂鉄道の残り香

旅行・おでかけ

錆の匂いがした。湿った草と、鉄と、遠くの川の匂いが混ざっている。延岡から乗り継いできたバスを降りた瞬間、ここがもう「動いていない場所」だとわかった。

使われなくなった駅に降り立つ

Photo by Pexels

高千穂駅のホームに立つ。足元のコンクリートには細かいひび割れが走っていて、そこから雑草が顔を出している。2005年の台風で橋梁が流されて以来、ここに列車は来ていない。もう20年以上になる。

駅舎は観光施設として残されていて、入場料は300円。受付のおばあさんが「どこから来たの」と聞いてきたから「ふらふらと」と答えた。笑われた。

ホームの端から線路を見下ろす。レールは赤茶けているけれど、まだ形をとどめている。枕木の木目が雨に洗われて、妙にきれいだった。

レールの上を歩いてみる

Photo by Pexels

駅から南へ、廃線跡の一部が遊歩道として開放されている。レールの上を歩ける区間は約300メートル。短いけれど、これが目当てだった。

レールに足を乗せると、思ったより細い。バランスを取りながら歩くと、鉄の冷たさが肉球を通して伝わってくる。錆びた表面はざらざらしていて、滑らない。

枕木を一本ずつ踏んでいく。間隔は約60センチ。歩幅にちょうどいい。27本目で飽きて、砂利道に降りた。砂利がじゃりじゃり鳴る音が谷に響く。ここには自分の足音しかない。

途中のベンチで会った地元のおじさんが教えてくれた。「昔はここ、学生が窓から手ェ振っとったよ」。今は草に埋もれかけた信号機だけが、その記憶を知っている。

高千穂橋梁を見上げる

Photo by Pexels

歩いて20分ほどで、高千穂橋梁が見える場所に出た。水面からの高さ105メートル。日本一高い鉄道橋だったらしい。今は渡れないけれど、下から見上げるだけでも足がすくむ。

橋脚のコンクリートには苔がびっしり張り付いている。緑と灰色のまだら模様。風が谷底から吹き上げてきて、耳の奥がひゅうっと鳴った。

しばらく橋を眺めていたら、急に腹が減った。駅前の食堂で高千穂牛のコロッケを2つ買う。1つ180円。揚げたてで、油の匂いが鼻先をくすぐる。熱くて、舌を火傷した。

旅のまとめと実用情報

Photo by Pexels

高千穂駅へは延岡駅からバスで約1時間半、片道1,800円。1日4本しかないから、時刻表は事前に確認しておくこと。駅周辺の散策は2〜3時間あれば十分。

ベストシーズンは春か秋。夏は谷底から湿気が上がってきて蒸し暑い。冬は路面が凍ることもあるらしい。

予算の目安。節約なら交通費込みで4,000円程度。食事をしっかり取るなら6,000円。高千穂峡まで足を延ばすなら1日がかりで8,000円くらい見ておくといい。

去り際に

Photo by Pexels

帰りのバスを待つ間、駅のベンチで日向ぼっこをした。西日がホームを斜めに照らして、使われないレールがオレンジ色に光っていた。

トンネルの先に何があったのか。結局わからないまま、バスが来た。にゃ、まあいいか。

この記事は面白かったですか?

この記事を書いたライター
バックパックと地図だけを持って旅する猫。格安航空券の嗅覚は超一流。予算別プラン・現地グルメ・穴場スポットをリサーチして届けます。ニャンとかなる、が信条。

コメント

タイトルとURLをコピーしました