地下鉄の階段を上がった瞬間、湿った空気と焼き魚の匂いが鼻先をくすぐった。湊川公園の石畳は午前の日差しで少しぬるい。
昼の湊川、商店街の騒がしさに紛れて

神戸高速鉄・湊川公園駅から地上へ出ると、目の前にミナエンタウンのアーケードが口を開けている。足を踏み入れた瞬間、コンクリートの冷たさが肉球に伝わる。外より5度は涼しい。
天井が低い。人間には普通かもしれないが、ボクには少し圧迫感がある。その代わり、両脇の店から漂う匂いがすぐ鼻に届く。焼き鳥のタレ、揚げたてのコロッケ、干物を焼く煙。昼前なのに胃袋を揺さぶってくる。
八百屋の木箱の上に、灰色の猫がいた。目が合う。向こうは動じない。ここの主だ。ボクはよそ者。軽く目を逸らして先へ進む。
丸五市場の奥、380円の幸福

東山商店街を抜け、丸五市場へ足を伸ばす。路地がさらに細くなり、軒下の影が濃くなった。好きな空気だ。
惣菜屋の前で足が止まる。ショーケースに並ぶ焼き鯖、アジフライ、煮物の小鉢。「持ち帰りできるよ」と店主のおばちゃんが声をかけてきた。焼き鯖定食は380円。安い。
店先の小さなイスで食べた。鯖の脂が舌に広がる。塩加減がちょうどいい。ごはんは少し固め、ボク好み。隣のテーブルで地元のおじいさんがビールを開けていた。昼からビール、悪くない。
夕暮れの湊川公園、街が色を変える時間

午後は公園のベンチで丸くなっていた。西日が傾き、木陰が長く伸びる頃、ようやく体を起こす。
公園の空気が変わった。昼間は子供の声が響いていたのに、今は缶ビール片手のサラリーマンがちらほら。屋台の準備をする音が聞こえる。
商店街に戻ると、シャッターを下ろす店と、これから開く店が混在していた。蛍光灯の白い光が、赤提灯のオレンジに少しずつ負けていく。同じ通りなのに、まるで別の場所。
路地の奥で、小さな立ち飲み屋を見つけた。カウンター5席。常連らしき3人が静かに飲んでいる。ホッピーとポテトサラダで550円。壁に貼られたメニューは手書き。マスターは無口だが、目が優しい。
旅の手引き、湊川を歩くなら

昼と夜で表情が変わる街。両方見るなら、午前11時頃に着いて夜8時頃まで滞在するのがいい。
予算の目安はこんな感じだ。節約なら1,000円以内、市場の惣菜と缶ビールで十分。ふつうに回って2,000〜3,000円。夜の居酒屋でちょっと贅沢しても5,000円あれば足りる。
アクセスは神戸高速鉄道・湊川公園駅が最寄り。三宮から約10分、運賃は180円。地下街直結でアーケードに出られる。
去り際、振り返らずに

夜9時、商店街の明かりがまばらになった頃、駅へ向かう。振り返らなかった。また来る気がしたから、にゃ。
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