三度目だからこそ、見逃していたものが見える。尾道の坂道に降り立つと、潮と線香と、どこかの家の味噌汁の匂いが混ざっていた。この街は「隙間」でできている。
千光寺山の麓、最初の一歩

ロープウェイを使わず、石段を選ぶ。足裏に伝わる石の冷たさが心地いい。苔むした段差、人間には狭い隙間、崩れかけた石垣。この街は猫のために設計されたんじゃないかと錯覚する。
坂の途中で三毛と目が合った。先住民の眼差し。ボクは視線を逸らして通り過ぎる。挨拶は必要ない。ただ「いる」ことを認め合えばいい。
千光寺への参道沿いに、招き猫美術館の看板。入口の狭さに安心感を覚える。人間には窮屈でも、ボクにはちょうどいい。
| 店名/スポット名 | 招き猫美術館 in 尾道 |
|---|---|
| 営業時間 | 10:00〜17:00(木曜定休) |
| 予算目安 | 300円 |
| 地図 | Googleマップで見る |
猫の細道、福石猫を数えながら

艮神社の裏手から猫の細道が始まる。幅は1メートルもない。人間はすれ違えないけど、ボクには広すぎるくらいだ。
丸い石に描かれた福石猫が点々と置かれている。園山春二氏の作品。1000体以上あるらしいが、数えていたら日が暮れる。17体で諦めた。
「全部見つけた人、おるんかね」。後ろから声。振り返ると、箒を持ったおばあさん。「わしも知らんわ」。笑って去っていった。地元の人も把握していない。それでいい。
細道の途中にある「梟の館」で足を止める。古民家を改装したカフェ。窓際の日だまりが呼んでいる。
| 店名/スポット名 | 梟の館 |
|---|---|
| 営業時間 | 11:00〜17:00(不定休) |
| 予算目安 | 600〜900円 |
| 地図 | Googleマップで見る |
坂の途中のカフェと、尾道ラーメンの誘惑

梟の館のアップルパイは、シナモンの香りが先に届く。温かい生地、酸味のあるリンゴ。猫舌だから冷めるまで待った。人間は熱いまま食べて「おいしい」と言う。不思議な生き物だ。
坂を下りて商店街へ。尾道ラーメンの匂いが路地に漂う。背脂と醤油の香り。朱華園は閉店したけど、「壱番館」がある。カウンター席の端に座る。
麺は平打ち。スープは豚の背脂が浮いて、見た目より軽い。650円。隣の常連らしきおじさんが「ネギ多めって言やあええのに」と教えてくれた。次は言う。たぶん。
| 店名/スポット名 | 尾道ラーメン 壱番館 |
|---|---|
| 住所 | 広島県尾道市土堂2-9-26 |
| 営業時間 | 11:00〜19:00(水曜定休) |
| 予算目安 | 650〜900円 |
| 地図 | Googleマップで見る |
尾道歩きの実用メモ

猫の細道を歩くなら、春か秋。夏は石段が焼けて足裏が痛い。冬は苔が凍って滑る。平日の午前中が静か。土日は観光客で細道が渋滞する。
JR尾道駅から千光寺山ロープウェイ乗り場まで徒歩15分。ロープウェイ片道320円。でも、歩いて登るほうが発見は多い。所要時間は倍かかるけど。
駅前の観光案内所で「猫の細道マップ」がもらえる。無料。スタッフのお姉さんが「迷ったら下に降りれば商店街ですから」と言った。迷うのも悪くないんだけど、にゃ。
| スタイル | 予算目安(1人) | 内訳イメージ |
|---|---|---|
| 普通 | 2,000〜3,000円 | ラーメン+カフェ+ロープウェイ片道 |
| ちょっと贅沢 | 5,000〜7,000円 | 海鮮ランチ+美術館+お土産 |
| 超贅沢 | 15,000円〜 | 古民家宿泊+ディナー+しまなみ海道サイクリング |
渡船の汽笛を背中に

駅前の渡船乗り場で汽笛が鳴る。向島まで3分、100円。乗らない。今日はここまで。
この街の魅力は「隙間」だ。路地の隙間、時間の隙間、人と人の隙間。その隙間に、猫も旅人も滑り込める。また来る。たぶん。
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