雨宿りに飛び込んだ民家の台所で、鼻がピクリと動いた。魚の油の匂い。シンクに傾けられたツナ缶から、黄金色の液体がこぼれ落ちようとしている。「もったいない」と思わず声が出た。
活用法その1:炒め油として使う

缶を開けた瞬間、魚の旨みが凝縮された香りが立ち上る。足裏で感じる台所のタイルは冷たいが、コンロの近くだけほんのり温かい。
この油、そのままフライパンに入れて炒め油にできる。チャーハンに使えば、わざわざ出汁を入れなくても魚介の風味が加わる。野菜炒めにも合う。玉ねぎを炒めたときの甘い匂いと、ツナ油の塩気が混ざり合う瞬間がたまらない。
「あら、猫。どこから入ったの」と台所の主に見つかった。ボクは窓際に移動して、知らん顔を決め込む。人間というのは、こういうとき追い出すか餌をくれるか、二択だ。
活用法その2:パスタソースのベースに

オリーブオイルの代わりにツナ缶の油を使う。ニンニクを低温で熱したあと、そのままパスタを絡める。油に溶け込んだ旨みが、麺の一本一本に染みていく。
鷹の爪を足せばペペロンチーノ風になる。醤油を少し垂らすと和風に化ける。どちらも5分でできる。旅の途中、安宿のキッチンで試したことがある。隣でパスタを茹でていたバックパッカーが「いい匂いですね」とこちらを見た。ボクは黙って鍋を見つめていた。猫は調理などしない。
活用法その3:ドレッシングの材料に

ツナ油に酢と醤油を混ぜる。それだけでサラダにかけるドレッシングになる。市販のものより塩気が穏やかで、魚の香りがふわりと鼻に届く。
レタスの葉の上でキラキラ光る油を見ていたら、窓の外に野良猫が一匹。目が合った。彼は鼻をヒクヒクさせて、こちらの匂いを確かめている。ボクも同じことをした。お互い何も言わず、3秒で視線を外す。猫同士の挨拶は、これくらいがちょうどいい。
玉ねぎのみじん切りを足せば本格的になる。マヨネーズと混ぜてディップにしてもいい。
活用法その4・5と保存のコツ

4つ目は卵かけご飯にかける方法。醤油の代わりにツナ油を回しかけると、黄身のコクと魚の旨みが絡み合う。朝食にちょうどいい手軽さだ。
5つ目はパンに塗る。トーストした食パンにツナ油を薄く塗り、塩を少々。ガーリックトーストのような風味が出る。バターより軽い。
保存は冷蔵庫で3日が目安。密閉容器に移すこと。古くなると酸化して匂いが変わる。鼻が曲がるような匂いになったら、それは捨てどきだ。
| スタイル | 予算目安(1人) | 内訳イメージ |
|---|---|---|
| 普通 | 150円 | ツナ缶1個で油は約大さじ1杯分 |
| ちょっと贅沢 | 300円 | オリーブオイル漬けの高級ツナ缶 |
| 超贅沢 | 800円 | 国産本マグロ使用のプレミアム缶 |
「猫ちゃん、これあげる」と台所の主がツナの身を小皿に載せてくれた。油は料理に使うらしい。わかってる人だ。ボクは少しだけ警戒を解いて、皿に近づいた。
そろそろ、行くか

雨が上がった。窓から差し込む光が床に四角く落ちている。ボクは日向を横切って、開いた勝手口から外に出た。振り返らない。ただ、鼻の奥にあの油の匂いが残っている。
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